台湾の「日星鑄字行」にお邪魔したときのこと

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6月中旬、台湾の「日星鑄字行」にお邪魔しました。
(台南の活版博物館についてはコチラをどうぞ)

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「日星鑄字行」とは?
台北に唯一現存する老舗活字屋。
工房内の文選エリア(活字が並んでいる場所)を一般開放したところ、
‘気軽に金属活字を購入できるショップ‘として一躍有名店に。
さまざまなメディアで取り上げられ、今や活版好きでない人でも関心を寄せる
台北の名所のひとつになっている。
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短時間の滞在でしたが、いろいろと見せていただいたので
簡単な忘備録としてまとめておこうと思います。

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【1・日星鑄字行の分室を見せてもらいました!】

大日本の愛さんから「張さんの新しい印刷工房みせてもらいなねー!」と直前に聞きつけ、案内してもらった分室。
場所はおなじみの文選場から斜め向かいのテナントにあります。

一歩入ると、小綺麗な室内に機械が所狭しと配置されていました!
ヨーロッパから取り寄せたという、状態の良いハイデル!


8×5のアダナもきれいに3台並んで、すぐにでも使えそう。


平台の印刷機、大きくていいなあ。
他にも鋳造機やアレやらコレやら色々…

まだオープンはしていないそうですが、すでに若いスタッフさんが2名勤務されていました。
実は先ほどから通訳をしてくださっている若い女性スタッフさん(ビジネス日本語もペラペラ…)も最近入社されたそうです。規模が倍。
息子さんを中心に、確実に若い世代が育っています。
活版印刷だけでここまでやっていけてる会社は、日本にはないのでは。

【2・組版材料(インテル)が無い問題】

昔と同じ方法で活版印刷をするための道具は、その多くが生産中止になっています
弊社では活字をつくる(鋳造する)ことができますが、鋳造のための機械はもう生産されていません
同じように、印刷機や活字を組むための道具も新しく生産されることはなく、中古品を整備して使っている状態です。これは世界共通で、昔ながらの活版印刷の工房は材料不足に悩まされています。
(樹脂版やカードサイズの家庭用印刷機は今でも生産されています!)

「インテル」という、行間を固定する仕切りの板もそのひとつです。
鉛インテルと木インテルがあり、一つの組版で大量に使います。
これがないと活字が組めませんが、日本国内では鉛インテルを生産する機械はすでに稼働していません。
弊社では、ストックが完全に底を尽きる前にどうにかできないかと模索中です。

張さんの工房でも同じ問題が起こっていました。
インテルを作る機械はありますが、故障していてうまく動きません。
これを修理するためには何が必要なのか?修理の時期は?
進捗は追ってお伝えできればと思います!

【3・活版のことについて、張さんとお話してきました】

最後に少しだけ、日本と台湾の活版印刷の現状についてお話ししました。

・活版ブームのおかげで、カードなどペラものを刷る自家印刷デザイナーが多くいること
若い世代が活版印刷に興味を持っていること
昔からの職人さんたちがどんどん引退していっていること
・職人さんたちの体力の問題だけでなく、材料不足により商業的に仕事が立ち行かなくなっていること
・新しく仕事が来ても、昔と同じように引き受けるだけの環境がないこと
「つらくてもやってみたい、就職したい」という若者に引き継げる環境がないこと

さまざまな共通する課題がありました。
どれも大変で、すぐには解決できないことばかりです。

しかし張さんは、技術継承の問題にメスを入れようとしていました。

「ゆくゆくは分室を、活版印刷の技術を教える場所にしようと考えています。
学校に教えに行くのではなく、工房で、私自身の手で技術を伝えたい。」

「でも現在の仕事が忙しすぎて…!母型の修理もしなくてはいけません。
それだけでも10年はかかるかもしれない。」

台湾の活版印刷を背負う先輩の活躍は、まだまだ続きそうです!

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気軽に文選体験や活字の購入ができる日星鑄字行。

活版文化の継承を全うしようとするその姿に、こちらも背筋が伸びます。
分室の正式オープンも待ち遠しいかぎりです。
みなさんも台北を訪れる際は、ぜひお立ち寄りください!

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日星鑄字行
店休日:毎週月火
※営業時間は曜日によって異なります
場所:大同區太原路97巷13號台北市